スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

【Dream Egg】最終話  気持ちが1つになった瞬間

【Dream Egg】最終話  気持ちが1つになった瞬間

~前回までのあらすじ~



高校生の光平は高校3年の秋になっても自分の方向性を見出せないでいた。

そんな時、話しかけられたラーメン屋店主に自分の気持ちを吐き出し、

自分の進むべき道に一筋の光を見つける。

しかし、迷いはまだ消えていていなかった。






今日も課外が終わると、光平は病院に向かった。





「やあ、光平元気ないね。」



母は病室に入るなり、光平の顔色から何かを感じ取った。





「ううん、まあ別に何でもないよ。」



光平が水島とケンカした次の日は母の退院する日だった。



1,2週間と見られた入院生活も大事をとるようにと医者から言われ、1ヶ月に伸びた。





「そう、まあいいんだけどね。



やっと母さんは休憩が終わりだよ。やっと我が家に帰れるね。



今は38キロ地点、もう少し、もう少し。」





光平は不思議に思った。



「母さん、何のことだよ。」





「光平が走っているように母さんも走ってるの。



光平が高校卒業するまでを一区切りとしてね。



せっかくいいペースで走ってたのに、ちょっとブレーキだったね。



母さん残りの期間、光平が元気に過ごせるように



おいしい弁当気合入れて作るから。」






母はきらきら輝いていた。



決して病気や疲れがとれた、そんな風ではなかった。



外から見ていて、一輪の花のように凛としていた。





「母さんね、光平の走っている姿見て元気もらってた。



光平にとっても高校卒業は大事なものだけど、



あたしが一人の親になってから18年頑張りましたっていう証でもあるの。



人は誰でも、そういうゴールをいくつも持ってるもの。





そして母さんが死ぬまでずっと走り続けるのは、お父さんとのマラソン。



出会ってから、20年近くなるけど、まだ20キロ地点にもいってないね。



でもどんなことがあっても、最後まで走り続けるよ、ホノルルマラソンにも出ちゃおうかね。」





不思議と母の目からは涙がこぼれていた。



窓から差し込む夕日が母の顔を明るく照らしていた。





「泣くなよ、ここは卒業式じゃないよ。今日は退院の日なんだから笑ってよ。」



光平は母に明るく言った。





話が落ち着くと母は光平にお願いをした。



「ちょっと、光平ジュース2本買ってきて。



母さん、のどが渇いたよ。光平が好きなのでいいよ。」





母は光平が買いに行くと、机からペンと紙を出して何かを書き出した。



ジュースを買いに戻ってきた光平に、母はおもむろにメモを渡した。





「光平頼みがあるんだけどいいかい。卵焼きをつくってほしいのさ。



どうしても家に帰ったら食べたいの。



父さんがもう少しで来るから、光平はさき帰って、



準備してちょうだい。レシピはメモに書いておいたから。」





母に言われた光平は何かを言いたかったが、そのまま家路に着いた。





家に帰った光平は冷蔵庫を開けてみた。中身はからっぽである。



父が食事の準備をしたのは1週間だけであって、それ以外はコンビニやインスタント、



たまに2人で食べに行ったりしていたからだ。





光平は近所のスーパーへ向かった。久しぶりに入ったスーパーはとても小さく感じた。



何年ぶりにここへ来たろう、そんな思いを抱きながら店内を回る光平。





小さかった頃は母さんとよく手をつないで回っていた店内。



そのころは毎日来ていても覚えていたのは、お菓子売り場と



アイスの置いてあるところだけだった。





ところが今では、1度回っただけでどこに何がおいてあるか



把握している自分がそこにいた。





ひょんなとこから光平は自分の成長に気づいた。



見えていた世界が変わったわけじゃない、自分の見える範囲が広くなったんだ。








会計を終えて店を出るころには、あたりは暗くなっていた。



スーパーの明かりが小さく見えるところで、光平はふと空を見上げた。



今日は新月の夜空。



見上げれば星が夜空にちりばめられていた。





きっと空の向こうで今日も明日も夢に向かってがんばっている人がいる。



自分は何かを知っていた気になったけど、そうじゃない。



まだ俺は走り出してもいないんだ。






自分の小ささも大きさもなんとなくわかりはじめた光平は、



うれしくなって駆け足で家に帰った。





早速家に帰った光平は料理の準備を始めた。





だしに調味料を合わせる。



メモには調味料は自分で考えなさいと記してある。



「母さんの卵焼きだから、醤油に砂糖を出しに加えてと。」





合わせだしを混ぜた卵を、ボールの向きを変えながらはしで10往復動かす。



卵焼き鍋を1分間ほど予熱をした後に、おたま1杯分の卵を流し込む。



光平はレシピを見ながらも手際よく作業を進めていく。





大きな気泡をつぶしながら、表面がドロドロになったきたら、



卵を奥から手前に三つ折りに畳む。



2回目、3回目と同じ要領で卵を流し込み、卵を折ってやっていった。








「ただいま、今帰ったよ。」



母と父が元気な声を上げていた。



「おかえり、グットタイミング、もうすぐ卵焼き完成するから。」



「なんだ、今日は光平が夕食作ってるのか。



だから母さんにスーパーよらなくていいって言うのはこのことだったんだな。」






父は母の荷物を肩から下ろして言った。



光平はへらで軽く上と横から押さえて形を整えた。



「完成、やっと終わったよ。」





光平はやり終えた表情で時計を見た。時刻は8:00を回るところだった。



2人が支度を終えて、光平と供に食卓についた。



「よく出来たね、どれどれお味は。」





母が最初に卵焼きにはしを伸ばし、続いて父も口に入れた。



光平は両親じっと見つめながら、



「どう、おいしい?」





両親は互いに顔を見合わせて、にっこり微笑んだ。



「あの時の、おれとそっくりの味だね。」



父が懐かしそうに感想を言った。





「何が懐かしいんだよ。」





「父さんも1回だけ作ったことがあるんだ、母さんが風邪を引いたときにね。」



「光平、調味料に塩をいれなかったでしょ。」



「だって、母さんの卵焼きはうんと甘いだろ。



塩なんかいれたら、しょっぱくなるじゃん。」




「そこがポイントなの。料理には相性があるの。人間関係と同じようにね。」





「昔、父さんも作ったとき塩をいれなかった。そしたら、母さん、



人間も料理も甘くしてばかりじゃだめだって。



時には相性が悪くても、その存在によって、思いがけないおいしい味が出来上がるってね。



母さんが、あなたにとっての塩が私になるって。そんなこと言うもんだから、



父さんは母さんとの結婚を決意したんだ。」






母は落ち着いた表情で口を開いた。





「母さんね、光平が病室に入ってきたとき、何かいつもと違うな、変だなって思った。



卵焼きを作ることで何かに気づいてほしかった。



光平にとって優しい言葉をかけることが親切なんじゃない。



時には塩のように自分に厳しいこともあるけど、



それが本当のやさしさであることも気づいてほしかった。」






光平は何も言わずに下を向いていた。



瞳からゆっくりと涙がこぼれた。



母は何でも見通してるように見えた。母さんは話を進めた。





「今日、母さん退院の日だろ。そしたら、午前中に水島君の母さんが来てくれてね。



2人がけんかしたみたいだって。水島くん悩んだらしいよ、推薦の話。



2人で正々堂々入試1本で勝負するんだって最初は言ってたけど、



少しでも早く両親楽させてあげたいし、光平のこと応援できるからって



最後は渋々決めたんだって。」






母はすこし怒っていた。



そして光平は顔をあげて母を見ることができなかった。





「今辛いのは、光平だけじゃなく水島君も同じでしょ。



光平がそっと背中を押し上げられる人が水島君でしょ。



水島君のことを1番わかってあげられるのが光平なら、



光平のことも1番わかってくれるのも水島君じゃないの。



18の今しかできない友情をもっと大切にしなさい。」






母は疲れたから寝るねと一言残しリビングを出た。



母の言葉が何よりも光平の心に響いた。





父と光平の2人だけになり、リビングには重い空気が流れていた。



5分か10分過ぎたころだったろうか、光平が顔をあげると、ゆっくりと父が話し始めた。





「母さんの卵焼き、すごいよな、普通じゃ作れないくらいとびっきりおいしいよな。」



小さくうなづく光平。





「光平ならもうわかるよな、母さんの言葉。



もっと大きくなって仕事するようになって、好きなことも、好きな欲しいものも、



たくさんのお金も欲しくなるけど、信頼や友情はお金には代えられないよな。」




ふと父は立ち上がり、背中を向けながら言った。





「自分が辛いときに誰かを守れる人であれ。



名前の由来は困っている人に平らで1本の光の道筋を作れる人であってほしい、



父さんと母さんはその思いでつけた。明日学校あるんだから早く休んで寝ろ」






父はリビングを出た。



その日はとても長い夜だった。







しかし光平の決意を固めるのに十分な時間だった。





母さんの弁当が自分を応援してくれたように、自分も心が温まる料理が作れる人になろう。



1枚のお札で買えるものは多いけど、それ以上に1つの料理はたくさんの人を幸せに出来ると思うから。





そのためにも店長が言ってたように、大学でもっと自分の可能性をひろげよう、



過去の自分を追い越せるようにがむしゃらに夢に向かって走っていこう。





水島には悪いことをした、明日すぐにあやまらないと。








次の日の朝、光平は水島を校庭に呼んだ。光平の表情はいつもより明るかった。





「この間はゴメン。俺やりたいことむしゃくしゃしてた。でも夢見つけたんだ。



大学で勉強して栄養士の資格とって、調理師免許もとって、



どれくらいかかるかわかんないけど、この町に帰ってきて、



みんなの夢応援できるレストラン開くからさ。」






「俺も言いすぎだった。でもほんとに料理人目指すのかよ。



じゃあ俺も頑張って、英語ペラペラになって、海外行くから、



日本一じゃなく世界で有名なレストランになれよ。」








光平は全力で前に走った。



2人の距離は30メートルくらいだろうか。



光平は振り返り水島に言った。





「悪いな、お前の気持ち知らないで適当なことばっかり言って。



俺さ、いい言葉とかわかんないし、何言っていいか分かんないけど、



推薦入試頑張れよ。それがプレッシャーとか重荷になるかもしれないけどさ。」






どこまでも響く声だった。





「ああ、バッチリ決めてきてやるよ。あとなんかあったら俺に連絡しろよ。



それが嫌だったらしょうがないけどさ。



俺らはさ小学生からの付き合いじゃん。



それに、知らないだろうけど、お前には辛いときに助けられたりしてんだよ。



今度は俺の番、頼りにしてほしい。そしてたまには、俺のこと元気付けてくれよ。」






2人とも涙でぐしゃぐしゃになっていた。





「俺ら、塩と砂糖の関係だな。」



「何だよ、それは。」







2人の顔を明るく太陽の光が照らしていた。



2人が見上げた空は、雲ひとつない青空だった。





END


スポンサーサイト
プロフィール

JOYJOB        ニイガタ若年就労支援サークル

Author:JOYJOB        ニイガタ若年就労支援サークル

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。