スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

【Dream Egg】最終話  気持ちが1つになった瞬間

【Dream Egg】最終話  気持ちが1つになった瞬間

~前回までのあらすじ~



高校生の光平は高校3年の秋になっても自分の方向性を見出せないでいた。

そんな時、話しかけられたラーメン屋店主に自分の気持ちを吐き出し、

自分の進むべき道に一筋の光を見つける。

しかし、迷いはまだ消えていていなかった。






今日も課外が終わると、光平は病院に向かった。





「やあ、光平元気ないね。」



母は病室に入るなり、光平の顔色から何かを感じ取った。





「ううん、まあ別に何でもないよ。」



光平が水島とケンカした次の日は母の退院する日だった。



1,2週間と見られた入院生活も大事をとるようにと医者から言われ、1ヶ月に伸びた。





「そう、まあいいんだけどね。



やっと母さんは休憩が終わりだよ。やっと我が家に帰れるね。



今は38キロ地点、もう少し、もう少し。」





光平は不思議に思った。



「母さん、何のことだよ。」





「光平が走っているように母さんも走ってるの。



光平が高校卒業するまでを一区切りとしてね。



せっかくいいペースで走ってたのに、ちょっとブレーキだったね。



母さん残りの期間、光平が元気に過ごせるように



おいしい弁当気合入れて作るから。」






母はきらきら輝いていた。



決して病気や疲れがとれた、そんな風ではなかった。



外から見ていて、一輪の花のように凛としていた。





「母さんね、光平の走っている姿見て元気もらってた。



光平にとっても高校卒業は大事なものだけど、



あたしが一人の親になってから18年頑張りましたっていう証でもあるの。



人は誰でも、そういうゴールをいくつも持ってるもの。





そして母さんが死ぬまでずっと走り続けるのは、お父さんとのマラソン。



出会ってから、20年近くなるけど、まだ20キロ地点にもいってないね。



でもどんなことがあっても、最後まで走り続けるよ、ホノルルマラソンにも出ちゃおうかね。」





不思議と母の目からは涙がこぼれていた。



窓から差し込む夕日が母の顔を明るく照らしていた。





「泣くなよ、ここは卒業式じゃないよ。今日は退院の日なんだから笑ってよ。」



光平は母に明るく言った。





話が落ち着くと母は光平にお願いをした。



「ちょっと、光平ジュース2本買ってきて。



母さん、のどが渇いたよ。光平が好きなのでいいよ。」





母は光平が買いに行くと、机からペンと紙を出して何かを書き出した。



ジュースを買いに戻ってきた光平に、母はおもむろにメモを渡した。





「光平頼みがあるんだけどいいかい。卵焼きをつくってほしいのさ。



どうしても家に帰ったら食べたいの。



父さんがもう少しで来るから、光平はさき帰って、



準備してちょうだい。レシピはメモに書いておいたから。」





母に言われた光平は何かを言いたかったが、そのまま家路に着いた。





家に帰った光平は冷蔵庫を開けてみた。中身はからっぽである。



父が食事の準備をしたのは1週間だけであって、それ以外はコンビニやインスタント、



たまに2人で食べに行ったりしていたからだ。





光平は近所のスーパーへ向かった。久しぶりに入ったスーパーはとても小さく感じた。



何年ぶりにここへ来たろう、そんな思いを抱きながら店内を回る光平。





小さかった頃は母さんとよく手をつないで回っていた店内。



そのころは毎日来ていても覚えていたのは、お菓子売り場と



アイスの置いてあるところだけだった。





ところが今では、1度回っただけでどこに何がおいてあるか



把握している自分がそこにいた。





ひょんなとこから光平は自分の成長に気づいた。



見えていた世界が変わったわけじゃない、自分の見える範囲が広くなったんだ。








会計を終えて店を出るころには、あたりは暗くなっていた。



スーパーの明かりが小さく見えるところで、光平はふと空を見上げた。



今日は新月の夜空。



見上げれば星が夜空にちりばめられていた。





きっと空の向こうで今日も明日も夢に向かってがんばっている人がいる。



自分は何かを知っていた気になったけど、そうじゃない。



まだ俺は走り出してもいないんだ。






自分の小ささも大きさもなんとなくわかりはじめた光平は、



うれしくなって駆け足で家に帰った。





早速家に帰った光平は料理の準備を始めた。





だしに調味料を合わせる。



メモには調味料は自分で考えなさいと記してある。



「母さんの卵焼きだから、醤油に砂糖を出しに加えてと。」





合わせだしを混ぜた卵を、ボールの向きを変えながらはしで10往復動かす。



卵焼き鍋を1分間ほど予熱をした後に、おたま1杯分の卵を流し込む。



光平はレシピを見ながらも手際よく作業を進めていく。





大きな気泡をつぶしながら、表面がドロドロになったきたら、



卵を奥から手前に三つ折りに畳む。



2回目、3回目と同じ要領で卵を流し込み、卵を折ってやっていった。








「ただいま、今帰ったよ。」



母と父が元気な声を上げていた。



「おかえり、グットタイミング、もうすぐ卵焼き完成するから。」



「なんだ、今日は光平が夕食作ってるのか。



だから母さんにスーパーよらなくていいって言うのはこのことだったんだな。」






父は母の荷物を肩から下ろして言った。



光平はへらで軽く上と横から押さえて形を整えた。



「完成、やっと終わったよ。」





光平はやり終えた表情で時計を見た。時刻は8:00を回るところだった。



2人が支度を終えて、光平と供に食卓についた。



「よく出来たね、どれどれお味は。」





母が最初に卵焼きにはしを伸ばし、続いて父も口に入れた。



光平は両親じっと見つめながら、



「どう、おいしい?」





両親は互いに顔を見合わせて、にっこり微笑んだ。



「あの時の、おれとそっくりの味だね。」



父が懐かしそうに感想を言った。





「何が懐かしいんだよ。」





「父さんも1回だけ作ったことがあるんだ、母さんが風邪を引いたときにね。」



「光平、調味料に塩をいれなかったでしょ。」



「だって、母さんの卵焼きはうんと甘いだろ。



塩なんかいれたら、しょっぱくなるじゃん。」




「そこがポイントなの。料理には相性があるの。人間関係と同じようにね。」





「昔、父さんも作ったとき塩をいれなかった。そしたら、母さん、



人間も料理も甘くしてばかりじゃだめだって。



時には相性が悪くても、その存在によって、思いがけないおいしい味が出来上がるってね。



母さんが、あなたにとっての塩が私になるって。そんなこと言うもんだから、



父さんは母さんとの結婚を決意したんだ。」






母は落ち着いた表情で口を開いた。





「母さんね、光平が病室に入ってきたとき、何かいつもと違うな、変だなって思った。



卵焼きを作ることで何かに気づいてほしかった。



光平にとって優しい言葉をかけることが親切なんじゃない。



時には塩のように自分に厳しいこともあるけど、



それが本当のやさしさであることも気づいてほしかった。」






光平は何も言わずに下を向いていた。



瞳からゆっくりと涙がこぼれた。



母は何でも見通してるように見えた。母さんは話を進めた。





「今日、母さん退院の日だろ。そしたら、午前中に水島君の母さんが来てくれてね。



2人がけんかしたみたいだって。水島くん悩んだらしいよ、推薦の話。



2人で正々堂々入試1本で勝負するんだって最初は言ってたけど、



少しでも早く両親楽させてあげたいし、光平のこと応援できるからって



最後は渋々決めたんだって。」






母はすこし怒っていた。



そして光平は顔をあげて母を見ることができなかった。





「今辛いのは、光平だけじゃなく水島君も同じでしょ。



光平がそっと背中を押し上げられる人が水島君でしょ。



水島君のことを1番わかってあげられるのが光平なら、



光平のことも1番わかってくれるのも水島君じゃないの。



18の今しかできない友情をもっと大切にしなさい。」






母は疲れたから寝るねと一言残しリビングを出た。



母の言葉が何よりも光平の心に響いた。





父と光平の2人だけになり、リビングには重い空気が流れていた。



5分か10分過ぎたころだったろうか、光平が顔をあげると、ゆっくりと父が話し始めた。





「母さんの卵焼き、すごいよな、普通じゃ作れないくらいとびっきりおいしいよな。」



小さくうなづく光平。





「光平ならもうわかるよな、母さんの言葉。



もっと大きくなって仕事するようになって、好きなことも、好きな欲しいものも、



たくさんのお金も欲しくなるけど、信頼や友情はお金には代えられないよな。」




ふと父は立ち上がり、背中を向けながら言った。





「自分が辛いときに誰かを守れる人であれ。



名前の由来は困っている人に平らで1本の光の道筋を作れる人であってほしい、



父さんと母さんはその思いでつけた。明日学校あるんだから早く休んで寝ろ」






父はリビングを出た。



その日はとても長い夜だった。







しかし光平の決意を固めるのに十分な時間だった。





母さんの弁当が自分を応援してくれたように、自分も心が温まる料理が作れる人になろう。



1枚のお札で買えるものは多いけど、それ以上に1つの料理はたくさんの人を幸せに出来ると思うから。





そのためにも店長が言ってたように、大学でもっと自分の可能性をひろげよう、



過去の自分を追い越せるようにがむしゃらに夢に向かって走っていこう。





水島には悪いことをした、明日すぐにあやまらないと。








次の日の朝、光平は水島を校庭に呼んだ。光平の表情はいつもより明るかった。





「この間はゴメン。俺やりたいことむしゃくしゃしてた。でも夢見つけたんだ。



大学で勉強して栄養士の資格とって、調理師免許もとって、



どれくらいかかるかわかんないけど、この町に帰ってきて、



みんなの夢応援できるレストラン開くからさ。」






「俺も言いすぎだった。でもほんとに料理人目指すのかよ。



じゃあ俺も頑張って、英語ペラペラになって、海外行くから、



日本一じゃなく世界で有名なレストランになれよ。」








光平は全力で前に走った。



2人の距離は30メートルくらいだろうか。



光平は振り返り水島に言った。





「悪いな、お前の気持ち知らないで適当なことばっかり言って。



俺さ、いい言葉とかわかんないし、何言っていいか分かんないけど、



推薦入試頑張れよ。それがプレッシャーとか重荷になるかもしれないけどさ。」






どこまでも響く声だった。





「ああ、バッチリ決めてきてやるよ。あとなんかあったら俺に連絡しろよ。



それが嫌だったらしょうがないけどさ。



俺らはさ小学生からの付き合いじゃん。



それに、知らないだろうけど、お前には辛いときに助けられたりしてんだよ。



今度は俺の番、頼りにしてほしい。そしてたまには、俺のこと元気付けてくれよ。」






2人とも涙でぐしゃぐしゃになっていた。





「俺ら、塩と砂糖の関係だな。」



「何だよ、それは。」







2人の顔を明るく太陽の光が照らしていた。



2人が見上げた空は、雲ひとつない青空だった。





END


スポンサーサイト

【Dream Egg】第4話  母の弁当が伝えたかったこと

【Dream Egg】第4話  母の弁当が伝えたかったこと

~前回までのあらすじ~



母が入院した光平はコンビニ弁当の毎日に飽き始めていた

ある日、ラーメン屋で水島から推薦入試の話を聞かされ、

さらに最近の様子を咎められた光平は苛立ちを水島に向け、

けんかとなってしまう。

水島が店を出て行った後、ラーメン屋の店主が話しかけてきた






「昔、私が高校生のころ、大学に行きたかったが



家庭の事情で行けなかった。



一緒に大学進学目指す親友がいたんだが、



ケンカをしてしまってね。



結局卒業式までゴメンの一言がいえなかったんだ。



10年後に同窓会で会う約束はしたんだがね。



卒業してから俺はアルバイトを転々とした。



同窓会には行きたいと思ったがそんな自分では



会わす顔がなかった。



そんな時だった、10年過ぎた頃に実家に手紙が届いたのは。



俺は先生になってこの町で待ってる、



だからお前も自信取り戻したら会おうってね。



必死になって2年修行して、この店を開くことができて、



やっとその親友と会うことが出来たんだ。」



光平は何かを思い出したようだった。





「その親友って渡辺先生ですよね。」



店長は驚いたようだった。







「この前30人で連れてきてもらった渡辺先生の



クラスの1人です。俺もけんかした友達も。




俺やりたいこと見つかってなくて。





でも母さんが入院するようになって、コンビニ弁当ばっかり食べてたら、



料理に対する気持ちがが変わってきたんです。





ここのラーメンもそうだし、作り手の気持ちが料理に伝わって



食べていると、心がすごく暖まるんです。



俺、今の話を聞いたりして料理人目指そうと思います。」







それは突然だった。



初めて話した人だったが、光平のやりたいことがスラスラと口に出てきた。





「まぁ、料理人になることは悪くない。



でも大学行ってからでも遅くはないさ。



俺だって色んな経験を通して自分の幅、



人間としての幅が広がったからだと思う。





大学で料理に関する勉強だっていい、自分のやりたいことでもいい、



色んな人と触れ合って来い。10年先は誰にもわからない。



今出来ることを精一杯やっていくんだ。」






店長は光平の熱を静かに落ち着かせるように諭した。





「もう少し考えてみます。ありがとうございました。」





そう言って光平は店を後にした。









光平は家に帰るとあるものを台所で見つけた。





ひっそりと隠れるようにしておいてあった袋の中には



弁当箱がいくつもあった。





中学に入ってからは弁当になり、2段弁当箱が良い、



やっぱり1段の長方形の弁当箱が良いなど



母にはわがままを言った。





持ち運びに弁当が壊れることも多く、



壊れた状態の弁当箱もそこには入っていた。





空っぽの弁当箱を手にとって見る。



思っていたよりずいぶん軽かった。



でも中身はきちんとたくさんの思い出が詰まていた。





夏なんかはまだいいけど、部活で土日も、



冬の寒い日も母さん早起きして頑張ってたんだな、



そう思うと光平の胸が熱くなった。









次の日の学校、光平は水島と口を利かなかった。



謝りたい気持ちはあった。でも素直になれなかった。



それは水島も一緒だった。







水島は光平に気づいてほしかった。



光平にいつもの自分を見失ってほしくなかった。





普通の友達であれば、相手の欠点など面と向かっては言わない。



でもそれは、あくまで自分にとって都合のいいことだからだ。





光平が光平であるために、たとえ水島は嫌われようと、



それは仕方のないことだった。





光平のことを誰よりも信じているから。





光平は水島と自分の進路とも心の中で整理がつかず、



ごちゃごちゃになっていた。





光平の目から見えるものはどれもが灰色に映った。





クラスメイトが受験勉強で必死になっているのに対し、



光平の心は冷たくなっていた。





昨日の熱い思いは心の片隅に息を潜め



自分だけの世界に入り込んでいるようだった。





「誰かの背中を押せる人であってほしい」





でも母の言葉が、一筋の光として心の中に入っていた。


【Dream Egg】第3話  「誰かの背中を押せる人」?

【Dream Egg】第3話  「誰かの背中を押せる人」?

~前回までのあらすじ~



高3の夏になり、受験へと向かう光平。

ある日、帰ると母親が入院いたことを知らされる。

母の事を心配心配しつつも、初めてのコンビニ弁当に心躍らせる。

その日の放課後、光平は母親の入院している病院に向かった。  







「どうぞ、どうぞ。母さんに言ってみんしゃい。」



母は体を起こした。

 

「相変わらず、元気あるね、ほんと病人じゃないみたい。



あのさ、実は俺まだ進路迷ってるんだ。



みんなとこのまま大学に行くことが



俺のやりたいことなのかなって。」

 

光平は母とは目を合わせず、窓の向こうを見ながら行った。

 



「そうだね、でも光平も18になったんだし、



色々私たちからはあれこれ口出しはしないよ。



ただ父さんと、母さんで光平に言いたいことは一つだけだよ。」

 

「何かあるの。俺に公務員目指せとか?」





光平は母に目を向けた。

 

 


「進路は光平が決めること。光平の人生なんだから。



ただ大人として、一人の人として光平には誰かの背中を



押せる人であってほしいということ。」

 



「それってどういうこと。なんかよくわからないんだけど。」

 



母は向きを変え窓を見つめた。優しい口調で話を進めた。





「簡単に言えば、人のためを思って行動してほしいってこと。



人は誰でも自分を優先したがるもの。



自分の欲しいもの、やりたいことを我慢して



相手のことを支えるなんて難しい。





誰かのために動くことは、母さんみたいに



余計なお世話も多くなる、自分を抑えなきゃいけないことも多く、



辛いことも多いでしょう。





それでもね、誰かの支えを必要としている人がいる。



何も特別なことをやれって言うんじゃないの。



光平が出来ることを精一杯やってほしい。





友達や人とのつながり、信頼はお金には変えられないことだと



母さんは思うから」

 

「うん、何となく言いたいことはわかる気がする。」





光平は何か思うように下を向いていた。

 




 



毎日が早く過ぎていく。



小学生の頃はあんなに長く感じていた1日が、



気づいてみればもう高校3年の秋だ。





光平は迷っていた。



自分の進路も家族や友達の大切さもわかってはいるものの、



心の中で走れていなかった。





母さんの入院は1ヶ月に伸びていた。



初めはおいしいと思っていたコンビニ弁当も次第に飽きていった。



一緒に食べている水島の弁当箱には、大きな卵焼きが入っている。

 

「また、うちの母さん、卵焼きでおかずのスペースとってるよ。



あと2品はここに入るだろうが。まったく、もう。」

 

愚痴をこぼしながら、大きい卵焼きをほおばっている。





「でかい、でかい。ボリューム満点だな」

 

水島の弁当だけでなく、クラスのみんなの弁当どれもが、



暖かさを放っていた。





コンビニ弁当は確かにおいしい。種類も多い。



でも何かが足りなかった。





みんなの持ってくる弁当には暖かさがあった。



作ってくれる人の表情、食べてくれる人の表情、



そこには人を支えてくれる力が確かにあった。

 

 


「なぁ、水島。俺があれだけ部活で走れたの、



母さんの弁当のおかげかもしれない。」

 

急に思い立ったように光平は口を開いた。





「まぁ、そりゃあ栄養はバッチリだからな。



でも光平は練習量とか、



ストレッチとかコツコツやったから、



メインはそっちじゃないの、否定はしないけどな」

 



「なんか、ふと思ちゃってさ。



なあ今日帰りにラーメン食べに行こうぜ。



先生の友達のトコ。」

 



「いいよ、でもいいのか?光平の母さん夕食作らないの」

 



「実は黙ってたけど母さん入院しててさ。



今日は父さんから500円もらって足りない分は



自分で出して、食べて来いって。」

 

 


「ふ~ん、そうか。大丈夫なのか光平の母さん?



俺も実は光平に話したいことがあるんだけど・・・



うん、今はいいや。後で話すよ。」

 

何かをいいかけたものの、その場の空気を感じた水島は話すことをやめた。

 






 

 


赤いのぼりに黒で店名が書かれている。



外装は黒で力を感じさせるものがあった。

 

「はい、いらっしゃい。何名さまで?」



 

「2名です。特製ラーメン大盛りでお願いします。」

 

2人はゆっくり話せるよう、座敷の席を選んだ。

「で、水島なんだよ。弁当の時間言ってたこと。



気になって授業集中できなかったぞ。」



怒っているというより早く聞きたくてしょうがない、



光平は口を走らせた。





水島は言いにくそうに話を始めた。


 

「悪い。実はさ、光平が早く帰っているときに、



俺はまだ自習してるじゃんか。



そしたら先生に呼び止められて、推薦入試やらないかって。



お前の自己アピールなら大丈夫だって。



もちろん小論文とかの練習もやらないとダメだけどな。



光平ゴメン。一緒に頑張ろうって言ったのに。



だから放課後とかもひとまずは推薦の勉強したいんだ。」

 

「別に俺に謝ることないだろ。



水島の進路なんだし。うん、わかったから。」

 

「もう一ついいたいことあるんだけど、いいか?



最近光平さ、集中力足りないよ。」

 

口を開いた水島は一気に光平に言った。

 



「何言ってんだよ、別に変わらないよ。



水島はいいよな、進むべき方向が決まってて。



推薦入試で決めちゃえよ。



そうすれば、一般入試なんか遊びだもんな。」

 

「なんか最近おかしいぞ、光平。



俺だって自分の成績と相談しながら決めたんだ。



光平だって今までだってコツコツやってきたんだ。



入試もなんとかなるよ。」

 

光平は顔を背けた。

 

「わかんないんだよ、自分の大事なもんとか、



やりたいこととか。俺のことほっとけよ。」

 





小学生の頃、早く大人になりたいと思っていた自分がいた。



中学生の頃は、25になったら何の仕事についてるだろうか。





夢を膨らませた。でも今は子供に戻りたかった。



日が暮れても母さんの夕飯の準備ができるまで、



何も考えずに遊んでいたあの頃に・・・





 

「はい、2人前おまちどうさま。ごゆっくり。」

 



出来立てのラーメンからは湯気が上がる。



2人の目の前の壁のように。



互いに顔を見合わせることなく2人は食べた。





今までにケンカは何度もあった。でも今回は何かが違っていた。





辺りのお客からはおいしいだの、スープが濃すぎるなどの談笑が聞こえる。

 

先に食べ終わったのは水島だった。

 

「ごちそうさまでした。」

 





光平はまだ食べていたが、先に水島は店を出た。



言えば気まずくなるとわかっていたものの、水島はありのままを伝えた。





でもやりきれない水島は道端に落ちていた空き缶を思いっきり蹴飛ばした。



中身の入っていないジュースの缶は勢いよくカランカランと転がった。

 

 


「俺のことなんか、何もわかっちゃいないくせに、水島のやつ。」

 

光平が1人になって食べていると、店長が話しかけてきた。

 

 


「ふ~ん、ケンカか懐かしいもんだ、



まるで俺の高校生時代を見ているようなもんだよ。」

 

「すいません。せっかく食べに来たのに、



変なとこ見せちゃって。」

 

光平は申し訳なさそうに言った。

 



「いや、別に構わないさ。でも早めに仲直りしときなよ、



ちょっと私の話をしてもいいかな?」

 

 

光平は食べ終えるとカウンターの席に向かった。



料理を作る厨房は熱気が込み上げていて、



その前のカウンター席へ何かを伝えてくるのであった。

【Dream Egg】第2話  光平のわだかまり

【Dream Egg】第2話  光平のわだかまり

~前回までのあらすじ~



光平は高校3年生陸上部を引退し、クラスメイト水島と共に



受験生としての夏を過ごしていた。



光平は学校では水島と切磋琢磨しながら、



家では家族のサポートを受けながら受験勉強に励んでいた。




陽の長い夏を越えて、秋へと向かう。



お盆を過ぎれば、日に日に太陽が沈むのが早く



なってくるように誰もが感じる。



暑さもピークは過ぎ、夜は過ごしやすくマツムシの声も響いてきた。





「ただいま。今日も疲れた。」



光平は普段どおりに帰宅した。



しかしいつもと違う家の雰囲気を光平は感じ取った。



2階は明かりがついていなかった。





そして台所にいたのはいつもの母とは違い、父の後姿があった。



光平は変だなと思いつつ父に話しかけた。





「父さん、母さんはどこいったの?」





「あ、ああ、それが母さんちょっと過労で倒れて病院に行ったんだ。」





「ほんとに、大丈夫なの。携帯にメールかなんか連絡してよ。」





「とりあえず、2週間くらい病院で様子見るって検査も含めて。



母さん頑張りすぎてたんだよな」





いつも元気だった母が倒れたことで父は動揺していた。



しかし光平は心配と期待とで膨らんでいた。





「ふうーん、明日、病院行ってこよっと。



となると父さんも俺もコンビニ弁当だね、明日の昼ごはん。



朝行って買ってくるから。」




「ああ、任せたよ。」






部屋に戻った光平は、普段どおり勉強に取り組めなかった。





今まで健康な母が倒れることはなかった。



そして、中学から弁当がはじまって以来、



母は1日たりとも弁当作りを休むことはなかった。



どんなに疲れていても、母は早起きをして台所に立っていた。





しかし、光平は友達がコンビニから買ってくる弁当が



うらやましくもあった。明日はついにその日がやってくる。





母もちょっと休めばよくなるだろうし、



何より明日の昼ご飯が楽しみだった。





今日は早く寝ることにして、



明日早起きして勉強をしようと目覚ましをセットした。







「お、今日光平珍しくない?コンビニの昼食なんて。



残念だな、卵焼き期待してたのに」






びっくりした表情で水島が言う。





「ああ、ちょっと色々あってな。それにしても初めて食べたよ、



ツナマヨネーズに照り焼きチキンのおにぎり。



俺の母さん、こんな具は時間が経つと悪くなるからってしないんだよね。



おにぎりの具と言えばおかかと梅干、たまに鮭だし。



うんうん、おいしい。」






言葉と同様に光平からは満面の笑みがこぼれる。





「えーっ、でも光平の母さんの弁当ほんとにおいしいじゃん。



俺のうちなんか冷凍食品多いしさ。



いやぁ、光平の母さんの作る卵焼きなんか天下一品だよ。」






「ふーん、あ、今日自習、無理だわ。講習終わったら行くとこあるから。」





「さては、予備校の講習とか申し込んだりしちゃったんじゃないの。」





「そんなんじゃねえよ。ちょっとはずせない用事が出来ただけだよ。



それよりもいいのか、勉強の勝負負けっぱなしで。



今度は何おごってもらうかな。」






「これから、頑張って英語だけじゃなく、全部得意科目になるんだからよ。



雑草は踏みつぶされてもな、頑張って起き上がるんだ。



俺の雑草魂あとで、見せつけてやる。



そうと決まったら、午後1番の数学しないと。」






2人は弁当を食べ終えると、光平は講義室に、



水島は質問をしに職員室へと向かった。





光平は久しぶりに学校を早く出た。



いつもは講習のため、朝は早く、夜は



7時を過ぎるために外は暗くなっている。





今は4時を過ぎ、夏の日差しに比べて



秋の夕日は自分の影を大きく見せる。





光平にとって病院は久しぶりだった。



コンタクトのために眼科など行くことはあっても、



総合病院に行くことはなかった。





病院に入ると光平は独特の空気を感じた。



病院の空気は決していい香りはただよっていない。



どこか落ち着きをなくし、それぞれの居場所を求め、



至るところではぐれているようでもある。





母さんの病室は401号室。



検査があるため個室にしてある。





母さんは賑やかな人だから、きっと大部屋が良かっただろう、



そんな思いをいだき、階段を1段飛ばしで光平は病室に向かう。





「いらっしゃい。今日の弁当はどうしたの?」





「お、意外に元気そうじゃん。会ってすぐその話?



父さんも俺もコンビニ弁当だよ。」




「そう、しっかりバランスよく食べるんだよ。」



「はいはい。プラスよく噛んで食べるでしょ。耳にたこが出来たよ。」





病院でありながらも2人は、自宅の雰囲気と変わらずに話をした。





「なんかここ来て相談って言うのもおかしいとは思うんだけど、



ゆっくり出来るしさ。聞いてほしいことがあるんだよね。」






立っていた光平はイスに腰を下ろした。



夕日が窓から射し込み、2つの影は壁に向き合った。

【Dream Egg】第1話  走り出した2人の夏

【Dream Egg】第1話  走り出した2人の夏

しんしんと雪が降り積もっていた寒い冬を越え、



もうすぐ暖かい日差しとともに春がやってくる。



光平は新しい一歩の準備をしはじめていた。





「この部屋ともしばらくお別れ、まあ18年間過ごした場所だ し、



いつでも帰れる場所があれば、一歩力強く踏み出せるな」


 




 

12時を過ぎ、4時間目もまもなく終了となる。





「はい、この問題解いたら、授業終了だ。



おい?水島フライングだぞ、まだ教科書片付けるな」





「先生、俺その問題ならとっくに解いてます、



先生それ昨日の宿題でしたよ。」





水島は先生のうっかりミスを鋭い指摘で言った。



クラスに笑い声が響く。





高3の7月に多くの運動部は引退を迎え、半年後に迫る



センター試験や私立大の受験に向け、学校の雰囲気も



徐々にではあるが、変わっていく。





水島と光平は陸上部に所属していた。



光平は長距離の選手、水島は短距離の選手。



それは2人の性格を表すものでもあった。





光平は計画的に継続性のあるコツコツタイプ、



水島は短期集中型で決断力、行動が早いタイプ。





イソップ物語のウサギとカメのようなもの。



それはそれでお互いに気が合うことが多かった。

 

「今日、いい天気だからテラスで弁当食べよう」

水島が光平に声をかける。テラスはちょうど2人が歩ける



スペースがある。そのスペースは座ると足が伸ばせるくらいで



居心地がよく、どこのクラスも何人かが出て食べている。



 

夏の空はまるでカキ氷のようにぷかぷかと浮いている。



どこまでも続いていく空に、雲は果てしなく伸びていく。



行く当てのない気持ちのわだかまりのように・・

 

 


「暑いな最近、なんか陸上終わったら、気抜けちゃったな。



 進路とか光平は決めたりした?」

 

「まだ、よくわかんない。



周りの雰囲気にまだついていけてないし。



今やらないと、やばいとは思うんだけどね」






光平はテラスのフェンス越しの空を眺めながら言った。

 

 


「俺は海外や英語に関係する学部とか、進もうかなって。



一応英語は得意なほうだし、ただ漠然とだけど、海外で



何か仕事ができたらいいなって思う。」

 


 

「俺は普通の会社員になるかも。



まだはっきりこれがしたいって思うこと見つけられてない。



箱根駅伝は走ってみたいけど、



大学で陸上ばっかりはかんべんだな。」

 


 

「でも箱根は、光平夢だったんじゃない?



 お、今日卵焼き2個あるじゃん。1個もらい」




 

話の途中で水島は光平の弁当に箸を忍ばせた。

 



「まあ、昔の夢だよ。ほんと水島、俺のうちの



卵焼き好きだよな。俺も好きだけど。



母さんの得意料理なんだよな。」

 

卵焼きを口に含みながら、水島は何か思いついたようだった。

 

「来週から夏期講習はじまるな。



   講習が終わったら学校で自習しようぜ。」

 

 


「お、そうでもしないとやらないもんな。



 いいじゃん、やるやる。」

子供みたくはしゃいで光平は返事をした。

 






「ただいま、母さん今日のご飯何?」

 

 


「今日はコロッケ。やけに今日は元気がいいね。



    何か学校であったの?」



 

「別に何もないよ。



夏休みの夏期講習終わったら放課後は教室で



自習してくるから、帰り7時過ぎになるわ。



  あと母さん、弁当のご飯の量減らしといてよ。



  もう部活終えたからそんな食べないって。」

 

 


「ごめん、ごめん、ついつい頑張りすぎちゃて。



  次から気をつけまーす。」

 

うっかりミスの多い母。そんな母の背中を見つつ



光平はコツコツとやるようになったのかもしれない。





夕飯を終えると光平は自分の部屋に向かった。



電気のついていない部屋は暗い。でも窓から見える



外の色は完全な黒ではない。外は黒に近い青が広がっている。











「これから、期末試験の結果返すぞ。



   呼ばれた奴から取りに来い。阿部、及川・・・」

 

それぞれにテストの結果が返ってくる。



昔の小学生の頃とも違い、教室がざわつくことはそうない。



高校3年ともなり、その結果は自分の進路に影響してくる。



点数がよいわるいは顔に出るものだ。

 

 


「まあ、点数がよかった奴も、悪かった奴も



しっかり復習しておくように。



  この前の3者面談で話したように、夏が勝負だぞ。



  明日からの夏期講習は遅れてこないように。





  おい水島、顔が死んでるぞ。



  今日の夕飯は明日からの元気出るようにみんなで



  ラーメン食べに行くぞ。学校の正門前に6時に集合だ」

 



担任の渡辺先生はみんなの元気を奪ってしまってるかのような声で言った。







夏の六時といっても外はまだ明るい。



普段行き通う道であってもクラスみんなでぞろぞろと歩けば、



違う風景に見える。夕日に重なりながら、



十字路の角に赤いのれんが見える。

 

「光平は良かっただろう?



  俺なんか得意の英語も点とれてなかった。



  今日はしっかり落ち込んで明日からは超元気に頑張るから。」

 

「水島は一夜漬けばっかだもん。



  めちゃくちゃいいとは言わないけど、



  2週間前からコツコツやってたから。



  それにしても先生がラーメンおごるなんて珍しいよな。」

 

2人は驚いた様子で話をすすめた。



話も弾みあっという間に赤いのれんの入り口へとやってきた。

 



「実は、前に何度か見てたんだけど、



  ここ先生の友達が始めたんだって。





  何でも高校のときに約束したみたいで、



  友達が料理人として店を出したら、



  渡辺先生は教え子連れて食べに行くってしたらしいんだ。





  連絡は取り合っても会うことはしなかった。



  高校卒業して12年ぶりに会ったんだって。」

 

店内は30人ほどの高校生でにぎやかになりつつあった。

 





「ほんとに?約束の場所の友情の味か。



  うん、ここめっちゃくちゃおいしいはずだよな。」

 


 

「ラーメン食べてエンジン全開といきますか。



  明日から講習頑張ろうぜ。」

 

 




「おう、なんか雰囲気出てきたな、受験モード。」












夏期講習は90分の4コマ。午前と午後2コマずつ。



普段の教室ではなく大講義室に100人ぐらいで受ける。



夏の太陽の暑い日ざしとは違い、講義室は



受験モードになりつつある生徒の熱気で暑さを増していった。

 

「今日は集中して何に取り組む?」



数学のファイルを持ちながら2人は渡り廊下を歩いていた。



 

「今日は英語の過去問やろう。



  勝負ね水島。英語得意だから負けたらカキ氷おごれよ。」

 


「ははーん。英語フリークに勝負を挑んでくるか。



宣言しておく、俺は勝ってブルーハワイをおごってもらうのだ。」

 



光平と水島は互いに切磋琢磨しながら受験生として意識を高め、



当たり前の生活を過ごしていった。





「母さん、ご飯おかわり。



頭使ってばっかりだとお腹空くんだよね。」

 

「はいよ、受験生。普通受験生だと



ナーバスになって食べなくなるんじゃないのかね。」



母は驚いた様子で、ご飯をよそい始めた。

 

「俺もそう思ってたんだけどね。



数学なんか腹ペコだと計算ミスもするのさ。」

 


 

「最近、父さんも競馬があたらないね、



ここはひとつ、1-2の光平と水島くんに投資かな。



2人とも受かったら焼肉に行こう。」

 

「父さん訳わかんないよ、ほかに何番まであるの?



それは万馬券かもよ。父さんと母さんのいい調教があれば、



もしかするとなるかも。でも俺頑張るから。」

 


受験生といっても家族が気を使うことなく、



食事の時間は楽しい時間を過ごした。



部屋に戻った光平は好きな曲を聴いてから、勉強に取り組む。





光平の好きな曲はMr.children「終わりなき旅」。



学校では課外に自習、家に着いてからも、



家族のサポートもあり順調に受験勉強は進んでいった。







あの出来事が起こるまでは。

プロフィール

JOYJOB        ニイガタ若年就労支援サークル

Author:JOYJOB        ニイガタ若年就労支援サークル

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。